メンブリージョ(マルメラーダ)と「かせいた」

ポルトガル語のマルメラーダmarmeladaのほうが、日本人には聞き覚えがあるかもしれません。
さらに、英語読みのマーマレードとなると、ほぼ日本語ですね。
スペインでは、マルメロとその砂糖煮、ジャムをメンブリージョMembrilloといいます。

上の写真は、スーパーなどで小売用にパックされたもので、右がスペイン、左がポルトガル製です。
もっとよい写真があったらいいのですが、ずいぶん前に現地で買ったものです。

私がメンブリージョについて一番記憶に残っているのは、
バルセロナのグランハ(直訳で「牧場」ですが、ミルクホール?のようなカフェ)でのこと。
その古めかしく、老若男女がにぎやかな店内の、壁際のテーブルだったか、棚に
どーんと特大羊羹か?!と思えるようなメンブリージョを発見した時のことです。

食べてみれば、新潟によくあるいちじく羊羹を思い出すような、日本人にも違和感のないような味で、
形も羊羹のような棹ものスタイルがスタンダードで、切り分けて食べるところなども同じです。
スペイン人には、のし梅は酸味があってウケそうにないけれど、かりん羹、いちじく羊羹は喜びそうな気がします。



左の写真は、新潟県三条市の吉文字屋さんのかりん羹、銘菓「初もみじ」。
メンブリージョ、マルメラーダはイベリア半島だけでないく、南欧、そして南米でも広く親しまれているようです。
右の写真はブラジルのグアバーダ(グワバでつくる)。チーズとともに食べることが多いとか。(パッケージ写真参照)


ところで、このメンブリージョ、マルメラーダはすでに南蛮菓子として日本にはいってきていたようです。
ところが、南蛮菓子だといわれるその菓子の名はなぜか「かせいた」です。
熊本銘菓であり、献上菓子であり、細川家に伝来しました。

「かせいた」はポルトガル語のカイシャ・ダ・マルメラーダCaixa da Marmeladaの「カイシャ」が語源だそうです。
スペイン語だとcaja「カハ」ですが、カタラン語だと、つづりも発音もほぼ同じ「カ(イ)シャ」です。
確かに「カイシャ」は箱で、「カシータ」は小さいことを表す接尾語がついて、小箱の意味になります。
箱にはいったマルメラーダを、ひと箱、ふた箱と数えたため、「かせいた」が呼び名になったのでしょうか?


余談ですが、「カイシャ」と聞けば、私はバルセロナに本社のある銀行、La Caixaを思い出します。
ジョアン・ミロのコーポレート・マークがとってもいいのです。




同時に、「箱」と聞いて、当時日本に入ってきたものの中で、私としては一番気になるのが、
聖餅箱Caixa de Hostiasです。上の写真はマカオのサン・パウロ天主堂跡の博物館に展示の聖餅箱。

現在作られている、九曜紋の焼印が押された「かせいた」を見て、何か不思議な感じを覚えます。
マルメラーダの箱と、それをはさんでいる薄種(種煎餅)の箱も含め、
ダブルで「箱」というネーミングへつながっているのではないかとも感じます。
明治になって改良してつくられたという、薄種にはさんだ現在の形状は、まったく新しく考えたものなのか、
または、以前よりそういった食べ方をしていた可能性もあるのか、興味のあるところです。


スペインなどでも、トゥロン(フランスならヌガー)など製菓用に、オブレアスを多用します。
なので、メンブリージョの上下をオブレアスではさんだ菓子があってもおかしくはありません。

スペインの静物画にもよく曲げわっぱのような入れ物がお菓子とともに描かれています。
あの中はなんだろうといつも不思議に思っています。メンブリージョ?ビスコチョ?それとも?

また、フランスのオルレアン名物にもなっているマルメロ羹Cotingacは、今も曲げわっぱ(ケセット=カシータ)に入っています。


それにしても、細川藩主は実際に庭でマルメロの樹を育てようとしたようですが、むずかしかったようです。
マルメロを育てようとしたくらいですから、マルメロ、マルメラーダという言葉は知っていたはずでは?
永青文庫所蔵の「百卉r状」(18C)だったと思いますが、マルメロの図がカラーで描かれているのを、
今年東京であった「細川家の至宝」展で見ることができました。
なぜ小箱が菓子の名になってしまったのか?箱にも意味があったような気がしてなりません。単なる思い込みですが。

薄種(おぼろ種)を「玉川」と呼ぶことも知り、ちょっと驚いています。熊本では普通の製菓用語なのでしょうか?
細川忠興の奥方はガラシア夫人(明智玉)ですし・・・。




その後マルメロの代わりとなった、かりん(左)の香りはとてもよいもの。

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2010.2 2010.11更新