むつの花

幕末の双六絵に「むつの花」が描かれています。
箱にぴっちりと紅白で詰められ、包丁の切れ目が入っています。
「むつの花」といえば雪(の結晶)を表しますが、菓子名としてよく使われました。
江戸期の菓子製法書「意地喜多那誌」にもみえます。



写真の「むつの花」は長岡の山岡屋さんの菓子です。菓子にも雪輪のデザインが。
簡単に4つに割ることができるよう、切れ目が入っています。
同じ長岡の銘菓「越乃雪」と類似の、口どけがはかない菓子です。

新潟には多く残る、このような押し物が、落雁と決定的に違うのは、「乾かさない」ということです。
賞味期限は2週間くらいとなっていますが、なるべく早く食べなくてはなりません。
こういう菓子文化が、だんだん失なわれていくようです。

関東のほうにいると、おいしい押し物がすでになくなっている感じがします。
江戸期にすでに「白雪こう」が消えて、落雁にとってかわられていくのは、日持ちやつくりやすさがあると思いますが、
さらには、関東では冬の乾燥した気候が、菓子にあわなかったことも要因かもと思います。
日本海側の冬は雪に覆われて湿度があり、粉の湿度も保ち安いため、
微妙な湿度が肝心な菓子にはよかったと思います。雪に守られて、雪を表す菓子なのです。

落雁は打ったあと、ほいろで乾かしますが、逆に新潟にはあまりこの文化が育っていないようです。
その代わりに、よい米の粉をつくり、米の味わいを楽しむ文化がまだしっかり残っています。
落雁に駆逐されて消えてしまった菓子文化の名残が、「粉菓子」として生きています。
「粉菓子」という呼び名が新潟県だけであることを不思議と感じるのは、新潟県人だけでしょう。


空からふわりと降りてくる「ぼたん雪」(粉雪とは違います)を食べたことがありますか?
ふわり舌の上に乗ったぼたん雪は、冷たさを感じる前に、はかなく消えます。
落雁とは似て非なる、空気を含んだあたたかな粉の菓子が、舌の上で溶けていく時、
子供の頃、あんぐりと口を開け、ぼたん雪を受けとめた時の空がよみがえります。

同じ雪輪のデザインの「舞すがた」という菓子について、また「白雪こう」(準備中)のページもご覧ください。

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2010.11