『福を招く お守り菓子』

この「いとおかし」がきっかけで、本ができました。
虎屋文庫で菓子の研究に携わる中山圭子さんとの共著です。

「いとおかし」に何度か訪れてくださっている方はお気づきかと思いますが、
このサイトでは、グルメやお取り寄せ的な関心は薄く、信仰や風土に根差した菓子に心を寄せています。

今回本のタイトルとなったのは、「お守り菓子」ですが、その根底にあるのは、
森羅万象に宿る神仏を敬い、ご先祖を大切にしてきた日本人の心とも言えます。
人為を超えた、尊く聖なる存在を身近に感じ、守っていただいていることへの感謝をこめ、
自らつくり、供え、いただく(護符として体に取り込む)という菓子に、最も注目しています。


名もなき人々がつくり継いだ菓子は、私たちの命をつないできた穀物(米など)でつくられ、稲作行事とも密接です。
そして、米の霊力により、福を招いたり、厄を祓ったりするはたらきを担ってきました。


私たち日本人は、菓子のおいしさや装いを大切にし、洗練された菓子に憧れます。
その気持ちが菓子文化を大きく前進させてきましたが、反面ちょっと忘れられている菓子文化もあることや
その菓子のつくり手にも心を留めてみたいと、私は思ってきました。

しかし現在、そのような菓子は、そのつくり手を失いつつあり、とてもピンチです。
つくり手の問題に加え、菓子に込められていたはずの原初の「おもい」を見失っていることも大きな要因です。
私たち日本人は、実に驚くほど多種で多重な菓子文化を持っているのですが・・・。
まだ間に合うものならば、こうした菓子文化をわずかでもつないでいけたらと思います。


「いとおかし」でご紹介している菓子は、私ひとりがあちこちに出かけているのではなく、
地元の菓子文化を大切にしている方々とつながることで、もたらされる菓子や、その情報に支えられてきました。
そしてこの度、一番最初からの友人である中山圭子さんと一緒に、本の形にまとめていく作業は、
今まで思いつくまま積み重ねてきたファイル群を見直す、よい機会でした。

サイトでは紹介できなかった菓子行事も、本のほうには盛り込むこともできました。
この本が、皆さまの記憶の中の菓子、埋もれた「お守り菓子」を呼び起こすきっかけになったら幸いです。


『福を招くお守り菓子』 溝口政子+中山圭子 講談社 2011年11月 1,500円(税別)




本の中に掲載されている菓子のいくつかです。

ヨーロッパで「修道院のお菓子」というと、今もおいしい菓子の代名詞であり、
菓子製造のルーツの1つであることはよく知られています。

日本では、社寺の菓子に対して、皆さんどのようなイメージをお持ちでしょうか?
社寺の菓子が民間に引き継がれている例や、その逆もありますが、意外に知られていないようにも思います。
お菓子屋さんでつくられてきた菓子の中からも、たくさんの古きよき菓子が消えていきます。
実は上の写真の中にも、最近製造を終えた菓子も含まれているのです。

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2012.1