天神堂あそび

松江の郷土玩具の天神さまの「お宮」は素朴なつくりで、中には何も入っていません。
そこで、金沢の正月の縁起菓子「福徳」に入れられる土人形を、新旧並べてみました。

藩政時代の金沢の武家や大きな商家などでは、正月に立派な天神堂を飾ったといいます。
加賀前田家が金沢に入る以前に治めた、越前府中や能登七尾あたりの旧家では、大きな天神像を祀ったとか。
周辺部の町や村では、昭和の中頃くらいまで、暮れや雛まつり前の涅槃会の頃になると、
天神などの土人形の振り売りがやって来たそうです。

雛が、天神人形である地域は少なくないのです。
新潟の天神さまもそうかもしれません。土人形と砂糖人形(金花糖)も大活躍です。
そういえば、「福徳」にも砂糖人形が欠かせません。

改めて「福徳」の種人形を眺めてみると、天神堂に必要なパーツがいくつか含まれています。
御鏡、灯籠、加賀藩の天神堂を守るのはなぜか稲荷の狐、写真にはないのですが、鏡餅や狛犬もあります。
鯛や蟹(写真最前列右)は、天神さまへのお供えでしょうか?
蟹は現在富山県ではカレイと並んで、天神さまの日(1/25)の供物だとか。

正月に武家が天神堂を祀るのをまねて、子どもたちの遊びとして、あるいは庶民がまねて
毎年の「福徳」の種を集めては、天神さま飾りを楽しんだのでしょうか。
フランスのクリスマスの生誕シーン飾る人形を、毎年少しずつ集めたというクレッシュの話に通じるようです。

フランスの教会で、生誕シーンを飾ることを禁止された時代、
せめて家庭でミニチュアのクレッシュを楽しもうと、菓子に入れられたフェーヴを集めて飾ったそうです。
信仰に裏付けられた心情があってこその、小さな人形たちなのかと思います。
国は違えど思いは似て、「福徳」という正月の風習は、なかなかに興味深いのです。


赤と黒のモダンなデザイン。このお宮そのものを拝んだかのような・・・。

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20012.8