
多良間島のぱなぱんびん
沖縄・宮古島出身の友人が沖縄に帰ってしまってから、会えずじまいでした。
2、3年前、出張で東京にやってきた彼女に、15年ぶりくらいで再会。
いろいろ話をしたあとで、帰り際に〈おもしろいお菓子〉というのをいくつか教えてもらいました。
そのうちの一つが、〈形が面白い〉という、多良間島の「ぱなぱんびん」でした。
「ぱな」は「花」だと教えられました。
「びん」(=餅?)とつく名前からしても、小麦粉製の揚げ菓子?唐菓子の名残?と、興味が沸き、
実物を見てみたくなりました。そこで思いついたのが銀座の沖縄ショップでした。
ラッキーなことに、いくつかの製造元があるそうですが、1種類だけありました。

塩味で、ビールのおつまみによさそうな、後をひくおいしさがありました。右は東北のかりんとうと類似のデザイン。
私はデザインを仕事にするためか、この形にますます興味を持ちました。
そして、この同じ形が長崎のお盆菓子の中にもあることにも気がつきました。
パルメット文様のようなこの形、長方形の生地に長細い切り目を入れて、それぞれを丸めています。
この「長細く切り目を入れて丸める」製法、「花ぼうろ」という沖縄にしか残っていない菓子と似ています。
ただ現在の沖縄の「花ぼうろ」は、少し簡略化されているように思いますが・・・。
大阪の沖縄からの移住者が多く住む地区に「万歳餅」さんがあり、沖縄菓子をつくっていらっしゃいます。
大阪に出かけた折に立ち寄り、「花ボウロ」を買いました。現在沖縄でつくられているものとほぼ同じでした。
ご主人にお聞きすると、型で抜いているとのことで型も見せていただきました。
普段から売られていますが、お供物などにも欠かせないようです。

ドーナツ型のものは「ハーガー」、丸いものは「ボウロ」。そして簡略化された「花ボウロ」
この「花ぼうろ」、中国、あるいはインド、ネパールなどで、主に宗教行事のために、
または祝いのために、花型につくる揚げ菓子からの流れもあるように思います。
油に生地を細く落として花型を描くもの、「長細く切り目を入れて丸める」細工の後に揚げるもの、
それが日本では、油を使わない焼菓子に変化したのでは?
「花ぼうろ」、「ぼうろ」とつくと南蛮菓子かと思いますが、
単に小麦粉製の焼菓子「餅(ビン)」を流行の南蛮風ネーミングで呼んだのではないかと・・・。
江戸時代の菓子製法書「意地喜多那誌」(下記参照)には、小麦粉製の焼菓子「花ボーロ」がみられます。
長方形の小麦粉生地を「長細く切り目を入れて丸める」ことで、花型に細工して、焼いています。
「花ぼうろ」は江戸期にたいへん流行したようです。詳しくは中山圭子さんの著書 「和菓子おもしろ百珍」で。
一方、餅や団子生地でも「長細く切り目を入れて丸める」細工がなされ、民間信仰の中にも息づいています。
それらは「花餅」「花だんご」などと呼ばれてきました。
岡山県の一部地域の日蓮宗のお会式や、但馬地方の地蔵盆などのお供え菓子にみられます。
「花」というのは日常のものと違う、特別に細工したものであることを意味するのだと思います。
小正月行事の中には「ハナツクリ」といって、飾りものをつくることをさしたりします。
「ハナ」は木でつくれば「削りかけ」、紙でつくれば「御幣や、キリガミ」、餅でつくれば、「花餅」。
そう思ってみれば、「花ぱんびん」「花ぼうろ」は削りかけや御幣、キリガミに通じるデザインだと思うのです。
なんだかこじつけや推測ばかりで、申し訳ありません。
「花ぱんびん」について、沖縄の方が詳しく調べてくださるとうれしいです。
菓子製法書「意地喜多那誌」は「歴史民俗資料学研究」第12号(2007)に中町泰子さんが翻刻されています。
「削りかけ」は少しですが、中之条のボク市の河合洪太郎さん作のものをご覧いただけます。
キリガミについては、お正月のものだけですが、「おけそくとはっちょうがみ」を参考程度ですが、どうぞ。
上記の「和菓子おもしろ百珍」には、「長細く切り目を入れて丸める」細工が細かで、きれいな「花ぼうろ」の写真がいくつか載っています。
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