ペルーの生誕人形「ナシミエント」

ペルー製のキリスト生誕の場面を飾る土人形です。
2、3年前東京のフェアトレードのお店で、なぜか、これだけ売れ残っていました。
クリスマスが近づくと、家庭でこうしたキリストが生れた馬小屋の飾りをします。
この飾りを南米のスペイン語圏の国々では、主に「ナシミエント」(生誕の意味)と呼ぶようです。
また、スペイン風に「ベレン」(ベツレヘム)とも呼ぶそうです。

こうした飾りは各国でその国らしい民族衣装を着ていることが多いのです。
このペルーのマリアと幼子イエスも、民族衣装が気に入って買い求めました。
なんといっても、幼子イエスがかぶっている毛糸の帽子がそれらしいです。
スペインによって侵略された初めの頃は、すべてがスペイン式で行われたことでしょうけど、
今、幼子もペルー人であるかのような生誕人形を見ると、その歴史の積み重ねに思いを馳せます。

南フランスのサントン人形もプロヴァンスの衣装で、
プロヴァンスの暮らしや産物までわかるような、職人づくしあり、プロヴァンスの物語の登場人物ありです。

キリシタンが沢山いた安土桃山時代には、日本でも生誕祭や復活祭をはじめ、各行事が行われました。
生誕シーンの馬小屋も飾られたことでしょうし、生誕劇は一般に開放されて、演じられたようで、
今の日本人のように、信者でない人たちもクリスマス「ナタラ(ナタル)」を楽しんだそうです。
日本ではきっと、聖人たちは和服を着ていたことでしょう。

日本玩具博物館のサイトの中の「学芸室からNo.27」に紹介されている、宮崎佐土原の土人形の和服の聖家族はとても素敵です。

日本文化と融合したキリシタン文化は、隠れキリシタン関連として特別扱いをされますが、
戦国時代の人々の心に、広く、深く浸透し、それ以来ほぼ全国的に、ちゃんと息づいていたのに
自分が(たいがいの日本人も)見えていなかっただけなのだと、お菓子を追っているうちにわかってきました。

フランスでは、教会で生誕シーンを飾ることを禁じられた時代があり、
その時には、1月6日の王様の日(東方三賢者の日)のケーキの中に1つずつフェーヴとして
生誕シーンを飾る人形を入れていた時期があったそうです。
毎年一体づつ集めて、家庭での生誕シーン(クレッシュ)を揃えていった話は心に残ります。



左は20年くらい前にブリュッセルのお店で見つけたメキシコ製「ナシミエント」(「レタブロ」とも)です。
信者でもないのに不思議ですが、宗教的なものには、やはり惹きつけられてしまいます。
教会建築・装飾もウルトラバロックが出現するほどの、過剰さがメキシコらしさでもあるので、
ナシミエントも派手な装飾のものが目立つのですが、これは少し抑え目なデザインで、
扉を閉じると白い箱なのが気に入っています。右は大阪の歴博で買ったペルー製。

さて、余談ですが、
キリシタンの時代は、もちろんサンタクロースはいません。
スペインでは、今もいません。(「パパノエル」というおじさんがいます。こちらで少し言及)
1月6日(クリスマス最終日の十二夜)に、三人の王様がらくだに乗って、キリスト生誕の祝福にやってきます。
そう、バルセロナでは、ほんとにやってくるんです!前日の5日の夕方、海から船で到着し、市長の出迎えを受けます。
私がいた頃はラジオで「先ほど到着しました!」などと、中継していました。
夜は王様たちのパレードがあり、山車の上から王様たちがキャンディーの雨をふらせます。
私もまわりの子どもたちに負けじと必死で拾いました。

そして幼子イエスが金・没薬・乳香を贈られたように、深夜、子どもたちに王様たちから贈り物が届くのです。
翌朝子どもたちは、王様とらくだのために用意しておいた、パンと塩と水が少しづつ手がつけられているのを発見します。
この日こそが、乾燥そら豆が1つ入った王様のケーキ「ロスコン・デ・レイエス」を食べる日なのです。
お菓子屋さんのウインドウには、カタラン語で「今日は王様のケーキの日」と書かれています。

王様が贈り物と一緒に持ってくるカルボン(石炭)については、王様の日の砂糖菓子「カルボン」のページで。



メキシコの王様のケーキの中に入っていたという陶器の幼子イエス(右)とペルーのナシミエントの土人形。
ケーキの中から出てきた幼子は、巻き毛。お菓子友達からのいただきもの。フランスのフェーヴよりひとまわり大きめです。

メキシコでは王様のケーキを「ロスカ・デ・レジェス」と言うそうで、同じスペイン語とはいえ、やはり言葉が違います。
ブログ「ショコラーへの道」でそのロスカをご覧いただけますよ。
スペインでは本来のそら豆だけの場合もあり、人形(「ソプレサ」)は添え物でした(10年前)。
なので、メキシコで幼子イエスが入っていることにちょっとびっくりもしました。最近のことなのでしょうか?

そういえば、アメリカ国内でもヒスパニック系の地区では、「赤ちゃん」のプラスチックの人形がはいっているとか!

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2009.6