スプリンジェールとドイツの友人

私には、17歳の頃から文通している同い年のドイツ人の友人Wolfgangがいるのですが、
彼は旧東ドイツに住んでいました。ですので、兵役期間は西側の人間とは交流できないとのことで、
お母さん宛に手紙を出したり、また、壁が崩壊する前後には、ちょっとした緊張感も味わいました。

20代の頃、無謀にも東ベルリンまで、友人夫妻に会いに行ったことがありました。
今はメールもあって便利な世の中ですが、その頃の東ドイツでは、一般家庭には電話さえなく、
旅行も許可制で、彼らがハレからベルリンまで出てきてくれるのは、大変なことだったのではと想像します。
私のほうも、一般の外国人旅行者は東ベルリンへ「1日ビザ」で入ることができるだけでした。
その頃私が長期滞在していたパリから手紙をやり取りし、待ち合わせは東ベルリンのテレビ塔前で、と約束し、
本当にやっと無事会えた時のこと、そしてその日の思い出はものすごくたくさんあるのです。

今は大成功した友人は、会社を経営し、あちこち旅行をして、家も建て、私とは雲泥の差です。
ごく最近は、お菓子のことを奥さんBarbelと話すことも。
1988年のクリスマスプレゼントに、Wolfgangが送ってくれたドイツ菓子の本(下)には
アルザスなどで見かけるスプリンジェールが載っているので、ドイツに今もあるのか?など
いろいろ質問攻めにする中で、素敵なスプリンジェールのサイトも教えてもらいました。

  
当時東ドイツだったライプツィヒで1987年に出版された本は、カラー写真もあり、東側としてはとても贅沢な内容。

2009年のクリスマスプレゼントに、何がいいかと聞かれた時、
菓子木型か、木型についての本!と答えたら、両方、それも私の希望通りのものを送ってきてくれました。
そこで、普段は洋菓子をあまりつくることのない私が、「実験」と称して、つくってみました。
教えてもらったスプリンジェールのサイトのルセットで。それが一番上の写真です。
右に見えるのが、エピファニーを題材に彫られた18世紀末の木型を元につくられた樹脂型。
型と一緒にやってきた木型の本は、写真が美しく、とても見ごたえ(ドイツ語なので、文章は読めない)のある本です。


友人たちの旅行のお土産にいただいた木型やテラコッラ型と、今回届いたエピファニーがテーマの型(樹脂製)で実験。

この菓子は、伸ばした生地に型を押し付けて、抜いたり、カットした後に、半日から丸1日乾燥させることがポイント。
乾かすことで、模様もくっきりしてきました。そして、あまり乾かなかった底のほうが焼くと膨らみます。
なので、上の面はそのままで模様がきれいに、底が立ち上がるのがスプリンジェールという菓子の特徴です。
また比較的低温で焼くこともあり、表面は白く仕上がります。クリスマスツリーの飾りとしても活躍。
木型の本には、美しい彩色をしたものなども見えます。


一番上のだけが、アニス粒入りのスイス土産。あとは私のつくったもので、底部があまり膨らんでいません。
「足のないスプリンジェールはまがいもの」という言葉があるそうですから、私の実験の成果はまさにまがいもの。


スプリンジェールspringelreという呼び方はアルザスなまりのフランス語のようで、ドイツ語だと、スプリンゲルレ?
アルザス以外のフランスではパン・ダニpain d'anisと呼ぶようです。
油脂の入らない、ちょっと古めかしい感じのシンプルなクリスマスのお菓子で
アニスという、スペインや南仏などで親しまれる香辛料がポイントです。
大航海時代にスペインを通じて、フランドルへ入ってきたのでしょうか。
型(柄)とは切り離せないこの菓子には、何か絵馬的な要素もあって、どの柄も興味深いものがあります。
今はこれを陶土に押して焼き上げ、彩色したものなどもツリーのオーナメントとして好まれているようです。


スイス土産のスプリンジェールの木型で。

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2010.2